ボロ市前半戦 戦利品その3/火箸
2004年 12月 22日

だんだんボロ市らしいモノが登場。
今回は火箸。
「ボロ市はなんてったって道具ですよ。貴重な民俗資料になるような、
物語性のある道具を発掘しなくっちゃ!」
建築プロデユーサーMさんからのタイムリーなコメント。
そう!今年はようやくそのだいご味を体験する事になる。
ここ2〜3年、火鉢のセットになるモノを集めている。
そんな中、ちょうど今回のボロ市で、手頃な値段で火箸を売っているお店を発見。
しかしどれも割と新しい感じのスチール製、いまひとつ味の無いモノばかり。
それでも良く見てみると、その中に4〜6本程、鍛冶屋の打った後が残る、
他とは明らかに雰囲気の違うモノが混ざっていた。
それだけ選別してじっくり見ていると店のおやじは、
「それはせんばこきの歯だよ」と、ちょと得意げに言った。
「せんばこき???」
千歯扱(せんばこき。すごい字ですね。)とは昔の農具の一種。
そこにあったはモノは、明治から大正時代、鍛冶屋が打ったものだそうで、
新しい時代のスチール製はすぐさびるが、こいつは錆びにくいとのこと。
店のおやじ曰く、それを火箸に使うのが通だと言う。
値打ち物だと鍛冶屋の名工の名が刻まれているらしい。
値段も他と同じと言われ、即購入。
探していたモノに出会え、ちょっと幸せな気分。
以下補足。
千歯扱(せんばこき)
脱穀作業で使った道具で、たくさんの歯を持つことから千歯とも、一度に千把
(せんば)もの稲を脱穀できるから千把ともよばれるそうです。
千歯こきが発明された元禄時代は、農村で労働力不足、労賃の値上、裏作の普及、
換金作物の栽培などで、効率を上げる農具が求められていたそうで、そんな中
千歯が発明され、急速に全国に広まっていったそうです。
江戸時代から大正時代中頃に足踏み式脱穀機が普及するまで広く使われていた
そうです。
参考→岩手県立博物館(他にも様々なホームページで見れます)
http://www.pref.iwate.jp/~hp0910/korenaani/f/013.html
センバコキは、小学生の時社会科で習いました。
鍛造の歯ではなくて、針金を曲げた様な歯が付いていたように思いましたが・・・。
僕は、アルコールランプで蒸気を作る、咽頭の吸入器を手に入れました。
もともと特産地は大阪、鳥取、福井などだったらしいですが、
幕末から明治時代になって各地で地元産の千歯
が作られるようになり、歯の改良も進んだそうです。
そこで様々なバリエーションが出来たのでは無いでしょうか。
ちなみに西伊豆で自然農法に挑戦している義姉が見た物は
ノコギリ状だったようです。
職人の魂のかけらが入っているからよ!
実は、僕は高校生の時、火箸つくりの名人だったんです。
コークスの中に突っ込んで赤めては槌で打つ。
この繰り返しで、炭素含有量が多くなり、錆び難くなります。
勿論、名人が創った火箸には「Mマーク」が入っていました。
ちなみに、昔はエンジンのコンロッドは鍛造品が使われていました。
繊維が繋がった鍛造品は、粘り強かったからです。